新井宏が語る”理系視点の考古学シリーズ” 第2回 『C14年代推定法の変遷と課題』-新井宏
炭素14年代法を利用した歴博の「弥生開始時期の500年遡上論」が提示されたのは平成15年5月のことである。その後、「古墳時代遡上論」とでもいうベキ「箸墓年代論」も提示され、考古学界に多くの課題が投げかけられたが、はたしてその評価は定着したのであろうか。20年を経過した現在、当初の熱気に比較して、新しい測定資料の提出もほとんど見かけない。
それは、炭素14年代法が科学的な手法で有り、どこでも何に対しても使えるという願望ばかりが先走りして、それを阻止すべき科学系の研究者が考古学系に忖度して十分な牽制を怠ったからであろう。
本稿では世界各地で判明していた「炭素14法が古くでる現象」を示しながら、なぜ「地域差」がでるのか理論的な検討を行うと同時に、土器付着炭化物のように汚染環境に置かれた試料では僅かでも古い汚染物が残留すると大きな影響がでることを指摘した。事実、土器付着炭化物による炭素14年代は壊滅状態であり、その測定結果は厳密な検証から全て除外すべきである。