第75回 2018年2月9日 

 

現代技術が可能にする伝統建築(木内修)

 

昭和53年(1978)伊藤平左エ門12世の門を叩いて以来、伝統建築の設計を専門とし、代表作として、明治神宮神楽殿、伊勢神宮外宮神楽殿等がある。しかし、これらの建物は鉄骨造で、伝統木造建築ではない。伝統木造建築は明治以来、工学は基より、技術教育の枠外に置かれ、特に戦後は、建築基準法からも外された存在であった。伝統建築を木造で造ることはほとんど不可能に近かった。伝統木造建築の技術を継承していくためには、伝統技術を現代建築技術の表舞台に登場させない限り無理であるとの思いから取り組んでいる。特に、耐震性の解明と耐震化架構体の開発に力を入れてきた。昭和61年から62年にかけて耐震化架構体を考案したが、伝統木造建築の耐震性能をどう評価するかが問題となり、最終的に、応答解析により、最大応答剪断力と最大応答変位を求めることが最も良いと判断し、建物がひとつのかたまりの振動体とみなせるように架構体を工夫し、天井裏に板張り水平構面を設ける等、新しい試みも行っている。これらの工夫の成果は、実大実験により実証している。その後、平成12年(2000年)の建築基準法改正による性能規定化で、限界耐力計算による設計等を行うことで、建築基準法の範疇で実現することが可能になったため、引き続き、ここでの開発技術を具体的な建物に適用するため、耐震要素別実験を行い、復元力特性作成のための実験データを整備していった。最近の実施例数棟を紹介し、それらの建物に見られる伝統木造特有の構造特性に言及した。