第72回 2017年4月21日

 

年代に関する明治大学考古学ゼミナールを受講して (小田秀徳)

 

2016年6月に開かれた明治大学の公開講座「考古学の年代はいま」を受講し、4名の講師による講義の概要を報告した。

第1回は歴博工藤氏による縄文時代の年代論について。層位学、形式学の解説があり、考古学編年の基本的手法とその方法論的限界が伺える内容であった。

第2回は九大岩永氏による、中国から日本列島に伝搬する弥生時代の鉄器等の年代が、歴博新弥生年代論の発表後、中国考古学者により一斉に引き上げられた件について形式論からの反論が行われた。さらに出土人骨を用いたAMS法年代測定からも歴博年代論の無効性が主張された。

第3回は明大石川氏による歴博の新弥生年代論に関する方法論的観点からの批判であった。一方これまでの弥生年代論も新しすぎ、歴博年代と従来年代の中間が適当との立場であった。

第4回の近つ飛鳥博物館白石氏は歴博の炭素年代法を信頼し、箸墓古墳が卑弥呼の墓との従来の立場を堅持した内容であった。また終末期古墳の暦年代等における文献資料による年代と考古学的年代の矛盾について、注意深さが必要としつつ全体としては形式論重視の立場であった。

4名の講師は歴博の新弥生年代について少しずつ異なる立場であり、依然としてこの問題が収束していない現実が明らかとなった。

最後に年代論の現状を踏まえ、文学部を基盤とした日本の考古学界について、科学と文学の対比から構造的な分析を試みた。