第71回 2017年1月31日 

 

日本鉄鋼協会発行『遥かなる和鉄』の概要紹介 -(近藤照夫)

 

(一社)日本鉄鋼協会の創立100周年を記念して、「鉄の技術と歴史」研究フォーラム編集委員会から出版された『遥かなる和鉄』の概要を紹介した。「和鉄」とは日本製の鉄で、砂鉄や鉄鉱石を木炭等で低温還元した銑(ずく)・鋼(はがね)・鉄の総称であり、明治以降に輸入された鉄鋼や溶鉱炉などで製造される現代の鉄鋼(洋鋼)とは異なるものである。古代の日本では大陸から持込まれる鉄器や素材に依存していたが、6世紀からは朝鮮半島を経由して導入されたたたら製鉄技術を独自に発展させて、明治に至るまでこの和鉄が使用されてきた。

本書は12名の著者が、我が国における製鉄技術(主としてたたらによる砂鉄製錬)の歴史、古代鉄の耐食性・鍛接性・化学組成、古代製鉄で使用された鉱石、古代・中世の鉄価、鉄関連遺跡出土資料、近世初期の日蘭貿易による鉄輸出、出雲の近世企業たたらの歴史、江戸時代の鋳物業、近代化の中の鍛冶職人、日本刀製作プロセスの化学的合理性などを記している。古代よりは近世以降の製鉄技術が主対象とされている。内容紹介の後は、鉄鋼材料の起源(隕鉄説)およびヒッタイト帝国の製鉄技術独占説などについて、議論がなされた。