第70回 2016年10月18日 

 

キトラ古墳天文図について—観測地点の緯度とその伝統 -(平井進)

 

キトラ古墳の天文図が作られた場所について、従来、第一に星座の配置関係の歳差運動による変化、第二に観測できる星々の領域を示す構造の二通りの解析が行われている。

第一について、星座の描き方が観測されたとおりではないことから、科学的な解析の対象とならない。

第二について、キトラ天文図から緯度37.5度が導かれている。同様の緯度について高句麗、五代の呉越国等の天文図が示しており、山東半島北岸にあたる。この地方は斉であって、周の建国の天斉の地とされ、『史記』封禅書に八神が祀られていたとあることから、そのような伝統を推測してみた。

緯度37.5度はソウルの緯度にあたり、百済が滅亡した時の伝来が考えられるが、江華島の位置にもあたり、その地と倭との関係から継承された可能性も検討した。