第61回 2014年08月01日 

 

「日本書紀」の構造について(平井進)

 

「日本書紀」において、評→郡という書換え(郡評論争)があったように、大倭→日本、大王→天皇という統治体制の基本についても新しい時代のものを投影して書換えているということは、前代の統治体制を否定する効果を持つ。この意図を考えると、「日本書紀」が記述する時代の権力と「日本書紀」を作成する権力は断絶しており、その断絶を正当化できないというケースの可能性が高い。その場合は後の権力の正統性は前の権力に拠らざるをえず、権力がその前後で連続するという形式をとるために後代の体制が前代に投影された、と考えられるとのこと。このような「非連続仮説」をとれば説明ができるいくつかの事例を取上げて考察した。