第10回 2004年10月04日 

 

法隆寺創建に関わる年輪年代法の適用について(高野美ね子)

 

松浦正昭氏の論文「年輪に秘められた法隆寺創建」(日本の美術№455)に関し、再建された法隆寺五重塔の心柱は(焼け残った)創建時の相輪刹柱塔を使ったものであり、その考えは年輪年代法、文献考証学、建築・美術史学の何れにも整合し矛盾しないという論旨の紹介が高野氏からなされた。

科学的手法をうまく活用した研究成果ではあるが、尺度の考察から丈六を釈迦三尊像とした点について、同時代に複数の尺度が使われていたようなので尺度だけからは同定できないのではないか、とか、文献そのものの信頼性を考慮せずに、文献と年輪年代等の考古学的資料を即結びつけるのは危険ではないだろうか、というような議論がなされた。